歯髄炎および根尖性歯周炎の病態と臨床の講演会を聴講して
2019年欧州歯内療法学会(ESE)が「深在性う蝕と露髄の術策に関する方針」として声明書を発表したとの情報を学会誌で確認したため、6月9日大阪にて、徳島大学大学院医歯薬学研究部、歯科保存学分野の中西正先生の講演会で、ESEの最新の考えを再確認してきました。歯髄保存療法の考えとして、う蝕除去に際し、露髄する可能性がある場合の選択肢として、1.通接露髄、2.暫間的関節露髄、3.う蝕一部除去がある。確実な診査可能な限り正確な臨床診断、適切な治療方針の基、基本に忠実な手技にて治療を行うことを前提として、暫間的関節露髄を中心に考えるのがリーズナブルであり、治療の内容を十分に説明してから実際の処置に臨むのが重要であるという内容であった。
感染根管における象牙細管への根管内細菌侵入に関する研究においては、根管拡大だけで象牙細管深部に侵入した細菌を完全に除去することは、実質的に不可能であるとの事であった。従って、臨床的見地から、細管深部に存在する細菌(E.taecalis)に対しては、微小部位に封じ込め、栄養源を枯渇させて感染源を断つとする(entombment)ことに期待する事となるといった内容であった。明日からの臨床に大いに活躍できる内容であり、有意義な時間であった。